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駐在妻の異文化適応過程

皆様こんにちは、「駐在妻ライフキャリア研究所」臨床心理士の原田舞香です。今日は中国圏では「春節(旧正月)」の元旦ですね。北京では一晩中爆竹が上がり、お祝いムードだったのが懐かしいです。

 

さて、最近臨床心理士としての専門領域の話が少なく、すみません!今日は、先だってのブログでも、追ってご紹介させて頂きたい旨、お伝えしておりました「駐在妻の異文化適応過程」についてお話します。こちら、北京の医療機関でボランティアしていた際、セミナーでお話していた内容からの抜粋のシリーズです。

 

当ブログはプレ駐在妻、駐在妻、元駐在妻の皆様にお読み頂くケースを想定しています。皆様は今、どのステージでしょうか?どのステージであっても、「ああ、今私はこの辺りだな」と思って過ごすことは、その後の見通しを立てる上で大切なことだと思います。

 

今回「駐在妻の異文化適応過程」としてご紹介させて頂いていますが、元の理論である「文化的適応過程」がありまして、これはリスガード(Lysguard,S.)によって、「初期の適応」「危機」「適応の再獲得」というU字形曲線になるというモデルとして提起されました。

その後、ガルホーン(Gullahorn,J.T. &Gullahorn,J.E.)によって、この適応過程と帰国後の自文化での再適応過程の2つのU字形曲線を合わせ、その全体の適応過程がW字型曲線としてモデル化されたのが上の図です。

 

 異文化適応の過程では、ハネムーン期、ショック期、適応期を経てその後、リ・エントリーショック(Re-entry-shock)を受ける、と言われています。ここでちょっと、駐在妻の場合を当てはめてみましょう。

 

1.ハネムーン期

新しい国、地域にやって来て心機一転、新しい生活に適応しようと頑張る時期。街並みも、見るものも、食べるものもすべてが新しく、多少不便があっても「異文化だから」と思ってそれを許容しようと試みます。周囲と新しい人間関係を結び、現地での情報収集や友達、サポーター作りに努めます。

 

私の感覚では、日本でのキャリアを中断し、駐在妻となられた方の場合、このハネムーン期がここまで高揚しないように思っています。

 

2.ショック期

ハネムーン期を過ぎ、現地での生活に失望を感じたり、「どうせこの国・地域は○○だから・・・」といくら努力しても出来ないことに限界や、無力感を感じるようになります。周囲との人間関係に限りがあることを感じ、日本での生活や、日本の親しい友人たちが無性に恋しくなる時期です。

 

3.適応期

 

ショック期から、自身の心の葛藤の末に落としどころを見つけたり、語学習得などへの努力、周囲にサポートし合える友人が見つかる、等を経て、適応期に入ると、しばらく安定した生活が続きます。

・・・ここまで来るのに個人差はありますが、半年から1年掛かるとされています。

よく、「駐在から1年持てば、大丈夫」とも言われていますね。逆に言えば現地での生活に適応できず、ダウンしてしまう方は、私も概ね1年以内に帰国されているように実感しています。

この適応期の後半になってくると、少々適応度のグラフが下降しています。これは、現地で適応した生活を送る中でも、親しい友人の本帰国を経験する等で別離の寂しさを味わい、「私もやっぱり日本に帰りたい」と思ったり、「やっぱり日本の医療が最高水準だ」「日本の○○が食べたい」と、ショック期ほどではないものの日本が恋しくなる時期です。

 

4.リ・エントリー期

悲しいかな、駐在妻の定め。折角苦労して異文化に適応したにもかかわらず、本帰国の日がやって来ます。

適応期の期間がそれなりに長く、現地の友人に恵まれ、海外生活が充実していればしていたほど、本帰国後、日本の生活への再適応に苦しむ時期もあります。この辺りが、先だってのブログでお話していました、本帰国したてほやほやの元駐在妻の方が向き合わねばならない壁です。

意外にほっとするのが「日本って、海外日本人社会ほど狭くない」ことです。日本の生活そのものは問題なくても、小さいお子さんのいらっしゃる方は保育園(保活!)・幼稚園の問題、大きいお子さんのいらっしゃる方は編入学の問題。お手伝いさんを雇っていた方は、ワンオペ家事&育児の問題もあります。

そして海外生活が長く、ブランクが長くなった人ほど、再就職の問題に向き合わなければなりません。

先だってのブログ「本帰国先が関東圏かそれ以外か」でも書きましたが、本帰国先地域によって求人の量は歴然と違い、地方の場合は「通勤出来る範囲にある求人」×「自分の経験・得意を活かせる仕事」があるか、という問題があります(私はこの辺りに大変苦労しました)。

このような複雑な要因があるため、日本での生活への再適応に掛かる期間には個人差があるようです。

 

以上、「駐在妻の異文化適応過程」をご紹介させて頂きました。皆様は今、この「異文化適応過程」のどのあたりにいらっしゃいましたか?そして、第3国へのスライドや、日本から再度海外駐在でまた違う国に行かれる方は、この「異文化適応過程」を繰り返している訳です。そのストレスたるや、いかなるものか!

「異文化適応過程」の森の途中で迷い込んでしまった・・・そんな時は当研究所でご相談に乗っておりますので、どうぞお気軽にご連絡くださいね。

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「駐在妻ライフキャリア研究所」では駐在妻・プレ駐在妻・元駐在妻の皆様が、心身ともに健康に、海外生活や本帰国後の「今、ここ」を精一杯過ごすことで、今後のライフキャリアを紡いで行くためのお手伝いをさせていただいています。

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